紙には、そして世界には表裏がある—— 装幀者・菊地信義インタビュー 〈前編〉 聞き手・構成:戸塚泰雄(nu) 1970年代前半に独立して以来、日本におけるブックデザインを牽引してきた菊地信義氏。1万2000点以上にも及ぶ膨大な彼の仕事は、どのような眼差しによって作られてきたのでしょうか。2014年7月まで神奈川近代文学館で開催された展覧会「装幀=菊地信義とある『著者50人の本』展」の会期中、文学と装幀を取り巻く状況に対しての今現在の思いを尋ねてきました。 ※「装幀=菊地信義とある『著者50人の本』展」の会期は終了しています。 「デザインとしての装幀」と新しい才能 ———菊地さんが装幀のお仕事を始められてから現在までに、最も変わったと感じられることは何でしょうか。 菊地信義(以下、菊地):僕らより前の世代の装幀は、編集者や印刷所による仕事が多く、特に文芸のジャンルは各社に必ず装幀のできる名物