『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』 '76 東映東京 監督:田中登 脚本:高田純 音楽:泉谷しげる 出演:安藤昇・小松方正・中島葵・ひろみ摩耶・石橋蓮司・小池朝雄・絵沢萌子・萩野まゆみ ここまで題名に忠実な映画も珍しい、というくらいに安藤昇の逃亡生活(一ヶ月強)とセックスだけが描かれている。こんなに解り易いタイトルで、こんなに解り易い内容の映画はそう滅多にお目に掛かれるものではない。 『仁義なき戦い』のヒットを受けて、それまでのヤクザ映画に風穴を空けるべく突如として現れた東映実録路線であるが、そのリアリズムとフィクション性の間に産まれるアンビバレンスに悩まされ続けていた。ハードに描かれる暴力には現実感を見い出す事は出来ないし、暴力をよりリアルに描いたら、エンターテインメント性は損なわれてしまう。娯楽としての実録路線であるが故に、完全な現実を映し出す事は出来なかったのだ。また、もちろん、その