(中公新書・1012円) 人々の「知」の裾野を支える機関と実感 本と図書館が大好きな我らが同志にとって、たまらない本だ。 国会の隣にある国立国会図書館東京本館。この場所を知らない人でも、今やオンライン登録しさえすれば、約184万点のデジタル化済みの図書や資料が、自らの端末で全部読める時代となった。国会図書館は東京本館のほか、関西館、国際子ども図書館の3館で構成され、本書がその全貌を解き明かした帝国図書館の昔日の姿は、上野にある国際子ども図書館の建物によって偲(しの)ぶことができる。 本書は、国家が運営する図書館の歴史を、1897年の官制で設置された帝国図書館を核に描く。現在は大学で日本近代史を講ずる著者は、国立国会図書館での勤務経験があり、1948年に設立された同図書館、その前史としての帝国図書館、そのまた前史としての東京書籍館等の複雑な変遷を丁寧にたどる。図書館に割く予算を一貫して渋って
![今週の本棚:加藤陽子・評 『帝国図書館 近代日本の「知」の物語』=長尾宗典・著 | 毎日新聞](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/8b05869d8470dc61c728bfa33958e0f803e4730b/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn.mainichi.jp%2Fvol1%2F2023%2F05%2F26%2F20230526ddm015040181000p%2F0c10.jpg%3F1)