『経済思想』『自由と秩序』ほか多くの著書で経済学と社会の在り方について、鋭く分析している猪木武徳大阪大学名誉教授が5月31日、日本記者クラブで「資本主義の未来を考える」と題して記念講演した。「資本主義は世界で様々な課題に直面しているが、現状と将来を論じる興味深い著作が出版されている」と指摘。ブランコ・ミラノヴィッチ著『資本主義だけ残った=世界を制するシステムの未来』と梶谷懐、高口康太著『幸せな監視国家・中国』を推奨した。 ◆米中はともに「資本主義」―勝つのはどちら? 猪木武徳氏の講演要旨は次の通り。 世界銀行調査部の主任エコノ ミストを20年間務めたミラノヴィッチは、優れた経済学者である。ベストセラーになった『21世紀の資本』(トム・ピケティ著=(2014年刊))の批評や解説は秀逸である。 ミラノヴィッチは同著の中で、現在の経済について、基本的に(1)利潤の追求、(2)株主、社員、住民など