奥村隆『ジンメルのアンビヴァレンツ』(PDF) 何気なしに学生時代の恩師が書いた論文を読んでみた。これはゲオルク・ジンメルのヴェーバーやデュルケム、そしてマルクスとはちがった社会の捉え方を検討したもの。こういった社会学についての文章を読むのはひさしぶりだったけれど、とても面白く読む。「個人に対し、社会が存在する」という構図ではなく、さまざまな要素が絡み合って、個人のように見える、あるいは社会のように見える(個人も、社会も確固たる実在性を持っているとは言えない)という議論をジンメルは提示し、そのような“見える化”を彼は「相互作用」という風に呼んだ。同語反復のようだけれど、この相互作用によってこそ、社会や個人が成立するのだ。奥村はこの観点を『エリアス・暴力への問い』で、ジンメルとエリアスの観点の類似について指摘する際に参照しているが、読んでいて思い出したのは馬場靖雄の『ルーマンの社会理論』であ