本書は「経済学方法論フォーラム」の共同メンバーでもある只腰さんが12年前に公刊されたスミス研究書である。スミスの道徳哲学(社会科学)研究の方法上の特質を、彼の学問論・知識論に着目しつつ――とりわけニュートンの天文学とロックの認識論との関連を重視しつつ――明らかにしようとしている。駆け出しの頃に斜め読みしたが、このたびじっくりと腰をすえて読み直す機会を得た。 本書が想定している読み手は、『道徳感情論』および『国富論』に関して一定レベル以上の知識を有しているような読み手である。その意味で本書は紛れもない専門書なのだが、数多あるスミス研究書とは一味も二味も違っている。文体は簡潔かつ平易であり、論の進め方も丁寧かつ着実である。重要ポイントは繰り返し論じられるため、読み手の頭の中に無理なく入ってくる。いい意味で入門書・啓蒙書の香りを放っている。 18世紀におけるニュートン受容の多様性を論じた第2章は