本書は論文・レポートの書き方についての「マニュアル」「ノウハウ本」では断じてない。「研究者の仕事=創造的な論文を書くこと」を前提としつつ、創造的な論文の本質的要件を考察することを通じて、研究者(社会科学者)に必要とされる心がけ(研究者としての要件)について論じたものである。したがって、初めて論文を書こうとする(これまで論文を書いたことのない)者が本書を読んでも、益するところはほとんどないであろう。しかし、いったん学部卒業論文を仕上げて、それを修士論文へとブラッシュアップさせたい者にとって、本書は益するところ大であるはずだ。実際、僕は本書を大学院修士課程における論文指導の授業のテキストとして使用している。 著者は「創造的論文とは、仮説の発想と仮説の論証の二つの創造性が豊かにある論文のことである」(p.5)と述べる。創造的な論文を書くためには、(1)読み手が知的好奇心・知的興奮を覚えるような仮
![伊丹敬之『創造的論文の書き方』 - 乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/9e3efaf63bc2b7f09ab0deb8dde6693875841bfd/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51C26KWS3WL._SL160_.jpg)