初出:旬報社,『ポリティーク』第2号,2001年9月25日,ISBN:4845107074 - はじめに 四月の某日大学の二回生のAさん(女子学生)とB君(男子学生)が,中年真っ盛りの僕の研究室を訪れました。二人の学生はあるサークルに加入し,フィールドワークを中心にさまざまな活動に取り組んでいます。サークルでは若手のW助教授の熱心な指導のもと,ある県に建設計画が進んでいるダムの是非,瀬戸内に浮かぶ島の産業廃棄物問題,吉野川の河口堰問題などをとりあげ,資料の収集・分析や現地調査をやってきました。また,松本サリン事件の「被害者」である河野さんの講演会を開いたりもしてきました。 W助教授からこれからさらに問題を深め,きっちりした視点をもつためには社会科学とりわけ経済学の古典を読んだほうがいいとアドバイスがあり,『資本論』の翻訳に参加したことがある僕を訪れたというわけです。 マルクスと『資本論』