南北に長い夕張市の、やや南寄りに位置する清水沢清陵町。新鉱の坑内員だった笠嶋一さん(77)は快晴の十六日、同町住宅街から一キロほど離れた国有林内に残る当時の坑口跡に、例年通り一人で花を供えた。「事故の数日前から、小規模なガス突出が相次いでいたんだ」。高ぶる思いに、言葉が途切れた。 笠嶋さんは秋田県出身。地元の石油採掘会社で一年間働いた後の四八年、北炭に勤めていたおじを頼って夕張へ渡った。月給は前の会社が五百七十円、北炭は一万円。景気の良さに驚いた。 胸騒ぎが的中 七五年三月、営業出炭を始める直前の夕張新鉱へ配属された。労組専従と職場復帰を繰り返し、迎えたその日。左手を打撲して仕事を離れ、病院からの帰り道、突然降り始めたアラレに胸騒ぎがした。「朝は天気が良かったのに。気圧が急変したらガスが出る」。帰宅して事故の一報を聞き、すぐ会社に向かった。 新鉱の北側坑道で、大規模なガス突出、次い