童貞の絶望と希望を描いた傑作ドキュメンタリー『童貞。をプロデュース』の監督・松江哲明。ディープなマンガ読みとしても知られる彼が、愛してやまないマンガたちを大いに語る──。 僕の十八番は大江千里の『格好悪いふられ方』。シングルは発売日に買った。深夜、布団を被ってウォークマンで熱唱していたら、寝ていた母親から「泣いてんの?」と心配されたのも懐かしい中2の夏。大江千里が好きだった理由は、徹底して失恋ソングだったから。恋に焦がれ、キスやそれ以上のごにょごにょに憧れて、女子とは二言三言交わしただけで惚れちゃって、けどフラれ、モテなんてものとは遠くて、大江千里の「♪いつかばったり出会ったら友達みたいに笑えるさ」に「そういうもんだよな」とカッコつけていたあの頃。彼は僕の心の代弁者だった。 しかし『モテキ』(久保ミツロウ/講談社)を読んでハッと気付かされた事実。大江千里が歌っていたのは「モテない男の歌なん
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