身近な不思議を突き詰めると、目からうろこな発見がある。研究の面白さを実感する瞬間だ。ただ、多くの人はその奥深さにおののいてしまう。研究者は科学の深淵(しんえん)に率先して飛び込む人種だ。この好奇心が人類に文明を築かせた。イグ・ノーベル賞は人を笑わせ、考えさせる研究を表彰する。そんなイグ・ノーベル賞にふさわしい、好奇心を触発する研究を紹介する。 将来、甘味や酸味、塩味などをバーチャルに再現して流通させる味覚メディアが普及する。基本5味覚を電気刺激で再現する方法論ができたためだ。電極を口にくわえて舌に電気を流せば、味を抑制したり、増強したりできる。どんなにまずい食物でも、おいしく頂ける日が来るかもしれない。だが電源ケーブルを口から垂らして食べる姿は品がない。 明治大学の大場直史大学院生と宮下芳明教授らが開発した「無限電気味ガム」は味覚メディアの電源問題を解決した。圧電素子をかんだ力で発電して舌