『法華経』方便品第二 最初期の仏教においては、ウパーヤは衆生が仏や悟りに近づく方策のことを主に指していた。 初期〜中期大乗の経典においては、ウパーヤは仏の智慧による衆生を済度に近づけるための巧みな方法を主に意味するようになり、菩薩の重要な徳目である。 『般若経』においては、仏の悟りに到達するために菩薩は方便として、執着しないということ(般若波羅蜜)を実践するのだ、とされる。 『大智度論』においては、菩薩道に般若波羅蜜と方便の二つがあるが、ふたつはひとつなのだ、と説かれる。 『法華経』においては、方便は仏が衆生に真実を明かすまでの一時的な手段、となってあらわれる。方便は章の題名ともなっており(「方便品」)、それまでに仏が説いた三乗の教えは、「方便」すなわち「仮の教え」である、と説かれ、実は三乗の人すべてが仏となる一仏乗だけがあるのだ、と説かれる(会三帰一)。また、如来寿量品では、釈迦が涅槃に