佐渡ヶ島、宿根木。 ここは本当に静かな町で、歩いていても自分の足音と小川のせせらぎしか聞こえない。たまに我々のような観光客がやってきて、やかましくおしゃべりをまき散らしてみたりもするんだけど、あまりにも町が静まりかえっているせいで、みんなすぐに黙り込んでしまう。カメラのシャッター音さえ気がとがめてしまうくらいだ。 知らない町を訪れるたびに、『もし、自分がこの町で生まれ育っていたら、どんな子供になっていたんだろう』なんてことを考えてしまう。故郷の以外のどこで生まれたとしても、きっと今の自分とは全然違う性格になっていたのだろう。そうやって、本来ありえたかもしれない人生を空想するのを好むのが、今の自分が身につけている性格で、我ながら本当に暗いな、やっかいな人間になってしまったなあ、と思う。今の自分とは全く違う子供を育ててくれそうな町としては、これまで神戸と富士吉田が圧倒的な二強だったのだけど、宿