Humanities(人文学)は、古典古代からの伝統ある学問分野なのだが、科学主義の波に乗って社会科学が「分離独立」して以降、生彩を失って久しい。社会に次いで人間まで「科学」として分離されてしまっては、文献以外に頼りとするものがなくなり、読者も減って、かつての諸学の王たちも見る影もなくなった。電子人文学 (Digital Humanities)はその限界を打ち破り、さらに公共電子人文学とすることで社会性を獲得することを目指すという。ではそれは本や出版とどんな関係にあるのだろうか。 人文学の凋落と知の迷路 人文科学とも訳される人文学は、本来は人間とその行為および社会を対象とする学問全般を指すが、今日では、主として文献に依拠する哲学、神学、宗教学、倫理学、文学、美学などに対して用いられている。人文学は本と関係が深い。西欧では古典、中国では経書があり、まず読むべきものとされてきた。そればかりでは