政策研究大学院大学 福井秀夫 国の援助よりも東電資産による負担が優先 法と経済学の「最安価損害回避者の理論」によれば、損害の予防が、加害者、被害者又は第三者のいずれかの一主体にほぼ一方的に依存して可能な場合には、当該一主体が最も安価・容易に損害を回避しうる立場にあるので、当該者に無過失責任を課すことによって被害を最小化できる。今般の原発事故に当てはめれば、専門知見と実務処理能力において、原子力事業者たる東京電力(東電)が国よりも圧倒的に長けていることから、最安価損害回避者が東電であることは明白である。 国との分担関係も含め、責任を規律する唯一の法である原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)の基本的な仕組みは、最安価損害回避者の理論に忠実である。原賠法3条1項本文では、無過失でも原子力事業者がすべての損害を賠償する責任を負う旨を定めるが、同但書により、「損害が異常に巨大な天災地変」に「よって