市司さんは、中学校の校長まで務めた教育者でした。退職後も地域の活動を積極的に行い、妻と2人、忙しくも充実した日々を過ごしてきました。80歳を過ぎた頃から気になる言動が増え、かかりつけの医師より、認知症の診断を受けました。 その後、引きこもりがちになってしまったので、デイサービスの利用を検討しましたが、気が進まないという理由で利用することはなく過ごしてきました。しかし、やがて妻が困り果ててしまう言動が目立ってきました。毎日、夕方になると荷物をまとめて、「家に帰る」と言い出すようになったのです。 妻は驚いて「ここが家でしょ」と伝えると、「何を言ってるんだ!」と大声を出して怒り出してしまいました。もともと物静かで、頑固ながら大きな声など出したことのない人だったので、妻は驚き、ショックを受けてしまいました。 多くのアルツハイマー型認知症の人に「親への固執(parentfixation)」という症状