第5回(2021.2.4)COVID-19における“ファクターY” ~なぜ若齢では重症化しないのか~ 慶應義塾大学医学部微生物学免疫学教室 吉村昭彦 2019年末に中国武漢で発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,全世界に拡散しパンデミックとなった。このような状況下で,COVID-19の感染拡大と重症化における地域差と年齢差が注目されている。 最初の流行は中国武漢で発生したものの,中国政府の封じ込め政策が奏功したのか,中国全体の感染者・死者数ともに欧米よりも格段に少ない。また日本ではPCR検査数が先進国のなかでも最低レベルであり,2020年春の緊急事態宣言時には医療崩壊が懸念されていたが,死亡者数は1000人程度と極端に少なかった。 この頃,iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授は,日本でSARS-CoV-2の感染者数が少なく抑えられている原因を「ファクターX」と