安倍首相は、一月二十六日の施政方針演説のなかで、「貧困」という言葉を一度も使いませんでした。これは、日本共産党の志位和夫委員長が代表質問の冒頭いみじくも指摘したように、安倍首相の現実認識が国民の暮らしの実態や生活感覚といかにかけ離れているか、それを象徴的に示しています。 しかし、「貧困論」の欠如は、政治の世界だけではありません。安倍首相の経済政策の背景にある経済理論を検討してみると、「新自由主義」派における「経済学の貧困」とでもいうべき事情が浮かび上がってきます。「新自由主義」派経済学の「貧困論」の理論的な特徴をみておきましょう。 貧困の原因を「人的要素」に求める アメリカにセオドア・W・シュルツという経済学者(一九〇二―九八)がいました。ミルトン・フリードマンとならぶアメリカのシカゴ学派(「新自由主義」派経済学)の重鎮として知られ、一九七九年にノーベル経済学賞を受賞しました。 シュルツは