要旨 □はじめに マンガは、連続する運動をどのように表現してきただろうか。マンガの表現技法を簡潔に説明するなら、イメージとテクストで構成されるものといえる。それらは、一枚のページをコマ枠で分節することで物語を効率よく表現する。呉智英は、マンガを「コマを構成単位とする物語進行のある絵」と定義づけ、さらに「現示性と線条性とが複合した一連の絵」(註1)と展開した。また四方田犬彦は「物語の時間的継起と平面の共時性との関係」(註2)とした。両者のいう「現示性」と「線条性」、「物語の時間的継起」と「平面の共時性」とは、ラオコオン論争でいう「空間的芸術」と「時間的芸術」にあたるだろう。イメージとテクスト、「空間性」と「時間性」の幸せな出会いがマンガである。それらが融合することで「空間的芸術」と「時間的芸術」の境界を乗り越え、再構成されることで、はじめて現代の日本マンガが成立する。 マンガは空間を描き、