「日本代表に選ばれるのは厳しいと思っていた」 これが阿部勇樹の本音だった。ユース時代からトップチームの一員として活躍し、年代別代表でも中核でプレーし、数多くの国際経験を積んできた。「ポリバレント」な選手の象徴とうたわれ、その才能を開花させたサッカーエリートはしかし、心の奥底では自らのふがいなさに思い悩み、それでも現状を打破するために前へ前へと進んできた。 そして恩師、イビチャ・オシムとの邂逅(かいこう)。阿部は恩義と情熱に突き動かされ、今を生きている――。 2006年、ドイツ・ワールドカップ(W杯)では直前で代表落ちを経験。そして4年後、ようやくW杯への切符をつかんだ彼の、今の偽らざる思いをひも解く。 ――阿部選手は今回、自身がW杯の日本代表に選出された理由はどこにあったと考えていますか? 1つには、ずっとジェフ千葉にとどまってプレーを続けていたらどうだったのかなという思いがありま