先生、どうして私に謝ったんですか?彼女が8歳のときに母は癌で他界した。6歳から入院する母を見ていたので、「あと何回いっしょにごはんを食べられるんだろう」と考えながら過ごしていた。「生きて欲しい」「きっと治る」と思いつつ、そう長くはないとわかっていた。 それでも彼女は充分に幸せだった。たくさん旅行もしたし、ピアノを弾くと褒めてもらった。母の介護用のベッドに潜り込んでは、馴染みのある香りに包まれながら眠る。そんな時間が好きだった。 2年間の闘病のすえ、母は息を引き取った。マセた子どもだったので、「ああ、お母さんに恋愛相談したかったな」と思った。一方、葬儀の翌日、学校へ行くのが少し怖かった。 「同級生の態度が変わっていたらどうしよう、なんて顔すればいいんだろう」 幸い、杞憂に終わった。同級生はみんな普通で、母が他界する前と何も変わらない日常があった。少し違うとするならば、彼女が夜更かしを覚えたこ