東日本大震災から、6年が過ぎた。この震災の前後で、日本の社会は大きく変わった。それとともに、人々の関心も大きく変わった。災害と原発の問題に人々の関心が集まるようになった反面、忘れられがちになった問題も少なくない。 そのひとつが「格差」の問題である。 思えば震災前は「格差社会」が流行語となり、「格差社会論」と呼ばれる言説が世に満ちあふれていた。毎月何冊もの本が出版され、中身は玉石混淆だったとはいえ、それぞれに一定の読者を獲得していた。格差と貧困が現代日本の解決すべき課題だということが、共通認識となりかけていた。 ところが震災の後になると、さっと潮が引いたように、「格差社会」という文字を見かけなくなった。どうでもいいことだが、震災前には私のもとにも格差社会に関する本を書いてくれという依頼が続々と舞い込んだのに、最近ではさっぱりで、こちらから提案しても渋い顔をされることが多い。 震災で格差を忘れ