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ブックマーク / honz.jp (9)

  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
    komlow
    komlow 2020/01/03
  • 何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史──『世にも危険な医療の世界史』 - HONZ

    現代でもインチキ医療、危険な医療はいくらでも見つけることができるが、過去の医療の多くは現代の比ではなくに危険で、同時に無理解の上に成り立っていた! 書『世にも危険な医療の世界史』はそんな危険な医療史を、元素(水銀、ヒ素、金など)、植物と土(アヘン、タバコ、コカインなど)、器具(瀉血、ロボトミー、浣腸など)、動物(ヒル、人、セックスなど)、神秘的な力(電気、動物磁気、ローヤルタッチ)の五種に分類して、語り倒した一冊である。 実のところ、このは何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史を、簡潔にまとめたものだ。言うまでもなく、「最悪の治療法」は今後も生み出されるだろう。 単なる事例集にすぎないともいえるのだが、それでダレるということもなく、出てくる例があまりにもトンデモでひどいことをやっているのでなんじゃこりゃ! と笑って驚いているうちにあっという間に読み終わってしまう。たとえば、ペス

    何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史──『世にも危険な医療の世界史』 - HONZ
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    komlow 2019/04/26
  • 『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む - HONZ

    一般に、は読めば読むほど物知りになれると思われがちだが、実際は逆だ。読めば読むほど、世の中はこんなにも知らないことであふれているのかと思い知らされる。その繰り返しが読書だ。 「ディアトロフ峠事件」をぼくはまったく知らなかった。これは冷戦下のソヴィエトで起きた未解決事件である。 1959年1月23日、ウラル工科大学の学生とOBら9名のグループが、ウラル山脈北部の山に登るため、エカテリンブルク(ソ連時代はスヴェルドロフスク)を出発した。 男性7名、女性2名からなるグループは、全員が長距離スキーや登山の経験者で、トレッキング第二級の資格を持っていた。彼らは当時のソ連でトレッカーの最高資格となる第三級を獲得するために、困難なルートを選んでいた。資格認定の条件は過酷なものだったが、第三級を得られれば「スポーツ・マスター」として人を指導することができる。彼らはこの資格がどうしても欲しかったのだ。 事

    『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む - HONZ
    komlow
    komlow 2018/09/07
  • 『「軍用地投資」入門』いろんな意味で掟破りな一冊 - HONZ

    ノンフィクションは一期一会、出会った時が買い時だ。いつか買おうなどと思っていても、きっと「いつか」は来ない。仮に来たとしても、既に書店には置いていなかったり、下手すると絶版になっていることもある。書はワケありなケースであるものの、今となっては入手することの困難な一冊である。 オビの「掟破りの不動産投資法」という文言が眩しいが、色々な意味で掟破りだ。沖縄島の県土の約8%とも言われる軍用地。これが投資家たちの手によって「金融商品」さながらに売買されているというのだ。この衝撃の実態を指南という形から伺い知ることが出来るのが、書『お金持ちはこっそり始めている 当は教えたくない!「軍用地投資」入門』だ。 軍用地とは、沖縄の米軍基地や自衛隊基地内の土地のことを指す。その約2/3は個人や、県、市町村の土地を国が借りる形になっている。一般的に不動産投資ではマンションなどを購入し、部屋を貸し出すこ

    『「軍用地投資」入門』いろんな意味で掟破りな一冊 - HONZ
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    komlow 2018/06/04
  • 『貨幣の条件 タカラガイの文明史 』 - HONZ

    交易から文明が生まれる。動物は棲息する生態環境の拘束から逃れることはできないが、ヒトだけが異なる生態環境からモノを移転して生態環境を自らの好むように改変したのである。交易を管理するために統一的な暦が編まれ、文字が発達し、交易の場所から都市が生まれた。異なる文化に交易ルールを強制し、違反者を取り締まるために権力が生まれ、その権力を正当化するために特定の宗教やイデオロギーが発達した。 そして交易の方法は、略奪・互酬・貢納・徴収・市場と進化した。書は、この壮大な上田史観をタカラガイを切り口にして、BC5千年を超えるアッシリアから現代までの悠久の時間と、大興安嶺のふもとから西アフリカに至る広大な空間を舞台に縦横に論じたものである。 第一部は史料の渉猟による「時をたどる旅」。中国では夏(二里頭文化)や商(殷)の時代に威信財としてのタカラガイ好みの文化圏が成立し、雲南では17世紀までタカラガイが貝貨

    『貨幣の条件 タカラガイの文明史 』 - HONZ
  • 『ぼくは物覚えが悪い』海馬を失った男は、永遠に続く30秒を生きた - HONZ

    今年も残すところあと1ヶ月となり、年忘れという言葉も聞こえてきた。皆さんにとって2014年はどのような年であっただろうか?そして来たる2015年のことを考えた時に、どのような感情が沸き上がってくるだろうか? 年の瀬ともなると、私たちは過去の出来事を頭の中で再現し、その情動を元に未来へ思いを馳せる。年を忘れるというくらいだから、辛かったことや不安な出来事を思い出す方も多いのかもしれない。いずれにせよ私たちは「今」という瞬間を疎かにするくらい、記憶というものに縛られながら生きている。それならば未来もなく過去もなく、現在進行形しか存在しない世界に行けば、不安を取り除くことは出来るのだろうか。 1953年、一人の男がてんかん治療のための脳手術を行った。左右の内側側頭葉を摘出するという実験的な手術であったものの、発作は無事に抑えられるようになる。しかしこの手術は、関わった全ての人にとって決して忘れら

    『ぼくは物覚えが悪い』海馬を失った男は、永遠に続く30秒を生きた - HONZ
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    komlow 2014/12/01
  • 『日本の居酒屋文化』―赤提灯の魅力を探る - HONZ

    赤提灯を「ニッポンの文化」と声高に叫ぶ男がいる。男は自分をこう呼ぶ。「赤提灯国粋主義者」。昭和51年から延べ20年以上、日で暮らし続けたマイク・モラスキー早稲田大学教授こそがその男だ。 日経済新聞の夕刊に連載を持つなど少しずつ露出も増え、もはや酒飲みの間でモラスキー先生を知らない人間などモグリである。ただ、これまでは少しばかり値が張るしか著していなかったためか一般的な認知度は低かった。前著『ひとり歩き』は2484円、その前に刊行した『呑めば都』は2268円である。 居酒屋論だけに読者は酒飲みだと思うのだが、この値付けでは読者に「馬鹿野郎!2000円もあったらホッピー、何杯飲めるのだ!」と突っ込まれるのは間違いなかったはずだ。モラスキー先生の一ファンとしては歯がゆい日々が続いたのだがついに3ケタ台で先生の教えを請える日が来た。光文社としては創業以来の偉業ではなかろうか。個人的には150

    『日本の居酒屋文化』―赤提灯の魅力を探る - HONZ
    komlow
    komlow 2014/04/10
  • 『ライフ=ワークス=プロジェクト』 NODE No.10 書評 - HONZ

    クリストとジャンヌ=クロードの作品のなかで、1985年の「包まれたポン・ヌフ」と1995年の「包まれたライヒスターク」だけは観てみたかった。 2005年、ニューヨークのセントラルパークで、彼らが7500あまりのオレンジ色のゲートを建てた映像は観ているのだが、この2つの作品のように歴史的建造物をすっぽり包むというような強いインパクトは感じなかった。 新しい橋という意味の「ポン・ヌフ」はパリ最古の橋である。アンリ3世時代に起工され1606世に完成した。二人はこの実在する橋を4万平方メートルあまりのポリアミド合成繊維で包んでしまったのだ。展示は2週間におよび、300万人が見物に来たという。許可を与えたのはのちに大統領になるジャック・シラク市長だった。 いっぽうのライヒスタークはベルリンにある旧帝国国会議事堂であり、現在もドイツ連邦議会が置かれている。彼らはこの巨大な建物を10万平方メートルのポ

    『ライフ=ワークス=プロジェクト』 NODE No.10 書評 - HONZ
  • 数学が出来ても、バカはバカ!? -『神は数学者か? 万能な数学について』 - HONZ

    英語ができても、バカはバカ」とは、どこかで聞いたようなセリフだが、「数学ができても、バカはバカ」という命題は、はたして真なのか、偽なのか。英語と同じように、数学を道具や媒介物と位置づけるなら、この命題は真となる。それなら話は簡単だ。結論は「数学を勉強せずに、を読め!」である。 しかし数学は、道具と位置づけるには、あまりにも上手く出来過ぎているようにも思える。全宇宙だけでなく、きわめて複雑な人間の営みさえも見事に記述することができるのだ。これなら、道具は道具でも「神の道具」ではないかと考える人間がいても不思議ではない。かのアインシュタインも、こう語っている。「数学は、経験とは無関係な思考の産物なのに、なぜ物理的実在の対象物にこれほどうまく適合するのか?」 この命題を、書の言葉で置き換えると、「数学は発見か、発明か?」という問いかけになる。神が自らの想像によって創造した数学、それを人間は

    数学が出来ても、バカはバカ!? -『神は数学者か? 万能な数学について』 - HONZ
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