文化的アイデンティティ 1960年代後半に顕著となったアイデンティティの政治学は、女性や黒人からの運動、また対抗文化といわれるサブカルチャーの出現に代表される。今日では、ポストコロニアルやグローバルリゼーションの視点も踏まえ、人種、ジェンダー、性的嗜好、階級、宗教、エスニシティ、ネイション、世代など、様々なアイデンティティの枠組みが言及され、それら各相互の錯綜が焦点となってきている。それに伴い、これらの焦点をまとめるタームは、幾分自己防御的な意味合いを持った「アイデンティティの政治学」から、様々な抑圧や圧力から自己を開放する方向性を持った「差異の政治学」へと移行しつつある。 ' The Personal is Political.'という言葉に象徴されるこれら様々なアイデンティティの「政治化」では、とりわけ「文化的なもの」が取りざたされる。本稿で使用するのは「文化的アイデンティティ」なわけ