これは宇宙のどこかの星のお話です。 ぼくは東京高検検事長。この春、検察のトップ、検事総長になる予定だった。 今の検事総長が辞任したあと、検察ナンバー2のぼくが検事総長に上がるはずだったのだ。 ところが、検事総長が、辞任はいやだ、定年まで検事総長をしたいと言ったのだ。 総理のいうことも聞かずにだ。 検事総長の定年は65歳。ぼくは東京高検検事長だから定年は63歳。 検事総長は約2年で退き、交代するという慣例があったが、今の検事総長は次のイベントまでは検事総長を続けたいといってきかなかった。 早く辞任してくれないと、ぼくは63歳になってしまい、定年を迎えることになる。検事総長になれなくなる。次の検事総長には総理と懇意にしているぼくが据えられるはずだった。 いや、でも。検事総長になれなくてもいい。こんな世の中、穏便に定年を迎えることができるのなら、定年退職しようじゃないか。 退職金ももらえるし。