ど真ん中の直球を投げられた。これはもう振り切るしかないと念じて、必死でバットを振り抜いた。どうにか当たることは当たったのだが、想像を絶するほどの、とてつもなく重いボールだった。例えてみれば、こんな感じだろうか。 冒頭から著者の挑戦状が、読者に叩きつけられる。本書は、社会心理学を俯瞰する教科書ではない、と。人間をどう捉えるか、願いはそれだけだ、と。生物や社会を支える根本原理は同一性と変化であるが、この2つの相は互いに矛盾する。あるシステムが同一性を保てば変化できないし、変化すれば同一性は破られる。同一性を維持しながら変化するシステムは、どのように可能なのか、と著者は問いかける。このテーマを軸として、フェスティンガーとモスコヴィッシという2人の先達の発想を学びつつ、読者は深くて溟い森の奥に導かれることになるのだ。 全ての学問(科学)は、常識を疑うところから始まるが、本書のページを捲る度に、私た
![『社会心理学講義』by 出口 治明 - HONZ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/64d73aa4383e02f9cb1d173a94eddfa9bdf922f7/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F41VZxzINtlL.jpg)