「銀河鉄道の夜」(宮澤賢治)に出てくるジョバンニは、学校の帰り、活版印刷所で働いていた。この町で私が仕事を始めた頃にも「活版印刷」は細々とだが、まだ残っていた。 印刷会社には文撰・植字工という職人さんがいて、片手に鉛の活字が入った箱を持ち、原稿を見ながら、箱から文字を拾って、版にする。ほっこり膨らんだかすかな文字の浮きが、目でも手でも感じとれるこの印刷が好きだった。 活版が、写植に移行したのは70年代のことだ。写植とは、暗箱に印画紙をセットして文字を現像するシステムで、オペレータが手動で1文字ずつ文字を打って印画紙に印字する。版下専門の職人さんがいて、版に校正が入ると、カッターで1文字1文字切り貼りをして文字組を整える。これをもとに印刷用のフィルムを作成し(整版)、印刷するのである。 取材の現場から、整理・デザイン、写植、版下、校正・校閲、製本、印刷、発送に至るまで、各分野の専門の職人たち