河合隼雄が言っていたことだが、カウンセラーがカウンセリングの内容を口外しないのは、職業倫理であると同時にひとつの技能でもあるそうだ。「今日のクライアントがさあ、こんなこと言ってたんだよ」と家族であれ同僚であれ、それを漏らしてしまうことで失うものがあるという話。だから、絶対に漏らさないと思える人にもクライアントのことは言わない。 河合さんの考え方では、「こういうクライアントにはこう対応する」といういつでも100%対応できる都合のいい技法は無いということなので、実際、深刻な人の話を聞くと途方に暮れることもある。カウンセラーもクライアントと同じだけ途方に暮れているけど、同時に「人間には直る力がある」と信じている。途方に暮れているのと同時にその信念を保っていられることがカウンセラーの技能であり、人にしゃべることでカウンセラーの気持ちがクライアントから離れてしまい、その技能の妨げになる。そういうよう