小林秀雄の遺作『正宗白鳥の作について』(『小林秀雄全集』別巻1)で、『本居宣長』を完成させたあと、なぜ正宗白鳥について言及したのか、その点について大いに気になっていた。正宗白鳥は、各種文学全集にもほとんど登場しない。いってみれば過去の人。最近、講談社文芸文庫で『世界漫遊随筆抄』が刊行された。正宗白鳥は、小林秀雄の思想の根底にある「人生いかに生きるべきか」について真剣に向き合っている作家との判断による。 小林秀雄全集〈別巻1〉感想 作者: 小林秀雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/06メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る 小林秀雄の文は、正宗白鳥の『自然主義文学盛衰史』を入り口として、その後に書かれる内容は、内村鑑三を経て、フロイトに至る。小林秀雄は「講演CD」でも述べているように、フロイトを高く評価していた。そして『精神分析入門』と『夢判断