≪自分自身のために小説を書く≫ デビュー作『ふがいない僕は空を見た』がベストセラーとなり、さらに映画化もされるなど、大きな注目を集める実力派作家、窪美澄さん(47)。第3作目となる新刊『クラウドクラスターを愛する方法』では、いびつなものを抱えた母と娘の関係を、くっきりとした輪郭で描いた。 ■母の気持ちを思う時間 「『家族』に興味があるんですよね。家族って、一番単位の小さな社会。家庭の中に社会はあるし、家庭を書くことは、その時の時代や社会を書くことにつながる。今後、どんなに作品を書いていっても、きっと軸は『家族を書く』というところにあると思う」 これまでの作品に登場する家族は、どこかアンバランス。今作でも、主人公の紗登子は、12歳のときに自分と弟を置いて家を出て行き、今は13歳年下の男と暮らす母・幸子に対し、複雑な感情を抱えている。母親が出て行ったとき、涙が出なかった-。肉親や恋人にすら、素