現在の「村下」(むらげ=たたらの総指揮者)は木原明さん。 工業高校を卒業後、島根県安来市にあった日立金属に入社し、冶金研究所に配属された。この研究所で、「たたら製鉄」を近代化した「角型溶鉱炉」による木炭製鉄の業務に、若い頃から従事してきた。 奥出雲は製鉄産業の故郷 島根県の奥出雲地方には、江戸時代末まで田部(たなべ)家、桜井家、糸原家、木倉(ぼくら)家など、日本を代表する大手製鉄業者が競ってたたらを吹き、日本の製鉄の中心地であった。 この地に製鉄業者が集まったのは、古くからこの周辺で良質の砂鉄が大量に採れたからだ。 この地の砂鉄を原料にして刀などの鉄器具を得ることは古代から行われていたようだ。古事記に、スサノオノミコトが鳥上山(とりがみやま)で八岐大蛇を退治して天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を得た、とある。それは、鳥上山にいた製鉄業者から、刀を奪ってきたのではないかと言われている。上流