中世日本、荘園公領制の成立によって地方の富が中央へと輸送・集約される必要性から、海上輸送において武力による保護・管理が求められると、武士たちは各地の湊や沿岸地域に勢力を持ち、海上交通に知悉した『海の民を編成し、海上の武力として組織化』しようと試みる。そのような『沿岸地域に所領を持つ武士が中核となって形成された社会集団』(P16)は「海の武士団」という言葉でまとめられることが多い。 本書はそのような意味の「海の武士団」というタイトルがつけられているが、著者はむしろその「海の武士団」ということばの曖昧さに疑問を呈し本質的な問題があるとしている。 『海の民が武士に編成されるのは戦争時に限定される。かといってそれを「海の武士団」としてしまうと、職業的な武士が彼らの大多数だったかのような印象を与えることになる。彼らのなかには、名字を持ち、侍身分を獲得していたものもいたことは確かだが、かといってその集