日本初のお雑煮のムックである。著者の粕谷浩子さんは、お雑煮が好きすぎて、各地の食べ比べレトルトパックの会社を立ち上げた情熱の人だ。その道のりは我々が想像するより、ずっと険しいものだった。お雑煮はレストランなどに無いため、粕谷さんは「地元の人と銭湯で仲良くなる作戦」などを駆使して、奥深いお雑煮の世界を丹念に調べていくしかなかったのだ。47都道府県のお雑煮を一挙に紹介した本書は、そんな努力が結実した日本の食文化史上の記念碑的作品である。 私はイベントや出版企画をまとめる仕事をしていて、その過程で、家でゴキブリを飼育して食べる女性や、古墳が大好きなシンガーソングライターさん、鉄工所を営むかたわらエスカルゴの養殖をされている方など、多くの面白い方々とお会いしてきた。粕谷さんは、その中でも対象物に向けられた情熱のピュアさ加減が、ほんとに、ズバ抜けた人なのだ。初対面で、これは普通じゃないと私は感じた。