ちょっと肉が薄くて歯ごたえがある。大衆食堂を愛する自由文筆労働者、遠藤哲夫(69)(通称・エンテツ)は、そんなカツ丼が食べたくなったとき、JR大宮駅(さいたま市大宮区)前の大衆酒亭食堂「いづみや本店」にくる。「トンカツ屋さんのカツ丼って肉が厚いんですよ。俺にとってはカツ丼って感じがしない」 カツ丼(600円)や親子丼(560円)といった丼物から、焼きそば(550円)やラーメン(470円)といった麺類、そしてアジフライ定食(650円)や肉豆腐定食(600円)といった定食。何でもそろっている。 店内をてきぱきと歩き回るのは、かっぽう着に三角布をつけたベテラン女性。静止することがない。声を上げればたちどころに反応し、注文をさばいていく。 一番安い焼酎や日本酒は220円。「結局、ここは酒が安いから呑(の)み屋化するんですよ」。そう言いながら遠藤は、日本酒を目いっぱい注(つ)いだコップに犬のように顔