イラスト 小幡彩貴 中国南部からヒマラヤにかけての山岳部には、雑穀のヒエで作ったユニークな酒がある。私はネパール、ブータン、そしてミャンマーで出会ったことがある。 まず作り方が独特。炊いた小さなヒエの粒を大きな壺にぎっしり詰め、麹を加えて一週間ほど発酵させる。するとヒエ粒がアルコールの塊になるのだ。そして、飲むときに、壺に湯を注げば、自動的に酒になるという仕組み。 味はやや乳酸発酵しており、うっすらと甘酸っぱい。若干発泡している気がするときもある。韓国のマッコリを薄めたような、あるいはカルピスサワーの甘みを抑えたような酒と言えば想像がつくだろうか。アルコール度数は低く、三パーセント程度だろう。 民族や地域によって飲み方がちがい、それがまた面白い。ネパール東部では「トゥンバ」というアルミの容器に発酵したヒエ粒を入れ、そこに水を注いで、ストローで吸う。居酒屋ではいい年をしたオヤジたちがわいわい