TOPへ 戦記目次 メレヨン島と田中歳春君 泉 五郎 一昨年秋の旅行日光の宿、薄暗い早朝のロビイで矢田と押本の両君が話し込んでいた。いつもの通り早起きしたものの、ほかにすることも無いので、これ幸いと同席してみたら話題は先般亡くなった田中歳春君の事であった。そして貴様も田中君のことについて何か書けといわれる羽目になってしまった。 実のところ田中君とは候補生時代八雲で2カ月同じ釜の飯を食ったほかには、20年5月にメレヨン島でほんの一刻顔を合わせただけである。戦後も賀状のやり取り位で取り立てて親密であった訳ではない。然し、事メレヨン島の話となると、あの悲惨な実情が余りにも知られてないので、これだけは是非とも期友の皆様に伝えなければならないという思いにかられるのである。 それと同時に先般来、クラス会としての戦史編纂(へんさん)の物議が相当かしましかったが、今更出来もせんことを議論するより、一人