植芝理一『新装版 ディスコミュニケーション4巻 学園編Ⅰ』読んだ。学園編というよりは物神編と言ったほうがいいかも知れないけれど。作者あとがき読むだに作者にもコントロールはできていなかったんだなあと思わせる、異様な主題(そして異様な書き込み)の「冥界編」が終わり、戸川安里香と松笛篁臣のもとに「変な事件」が持ち込まれる「巻き込まれ」形式のお話に。徐々に二人は狂言回し役になって、その後、三島塔子の登場で「精霊編」になって次作『夢使い』へ引き継がれる、という感じか。 わりと衒学趣味のオカルトマンガだった「冥界編」が終わった後に何が始まるかとおもいきや、いきなり女装男子の恋愛相談だからさすがだよな、と今となっては思うのこと。連載当時は「どうした、オカルト書きすぎて頭がおかしくなったのか」とか思ったが「頭がおかしくなった」のではなく「本領を発揮しだした」のだと気づくのはそれからしばらくしてからのお話で
青木幸子『ZOOKEEPER』1巻 [bk1][amazon] 面白い。 感じ入りました。 動物園の新米飼育員を主人公に、「動物園という現実」を描きます。 動物園が抱える「現実」。 人間が暮らす中で、野生動物を鑑賞可能な形で飼育・保護するとはつまるところどういうことなのか。 私たちのほとんどが、ただの一度も認識しないであろうこの視点を、この漫画は突きつけてくる。 そこが非常に面白いと思います。 動物園という存在が抱える、現実。 現状と、限界と、矛盾と、問題と、しかしながらの、有効性と善性。 結局のところ、私たちは、生きて動く動物たちを見る事が好きで好きでしょうがなく、それができる、ということは、それができないことにくらべれば、ずっとずっと素晴らしく、価値のあることなのだ。 ってことを、この漫画は、ズンと鋭く、ときに軽妙に、突きつけてきます。 二足歩行を憶えたばっかりの頃に、テカテ
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』に登場する本読み少女、長門有希さんが劇中なにを読んでいるのかを調査・検証する。 コメントにて追加情報があったので第9話『サムデイ イン ザ レイン』を追補。 コメントにて教えていただきました。 6月30日発売の「ザ・スニーカー」に「サムデイ イン ザレイン」の書き下ろし脚本が掲載されています。 本編冒頭、文芸部部室内で個々に活動(というのか?)しているシーンにおいて、長門有希が読んでいる本についての記述がありました。 「赤頭巾ちゃん気をつけて」庄司薫・中央公論社ハードカバー、図書館貸し出し本 アニメ本編のほうを見返してみましたが、あの描写では全くわからないですね。 この作品は読んでいないので、本編とどう絡んでいるのでしょうか。 6月30日発売の「ザ・スニーカー」に原作者、谷川流氏による脚本が掲載されているとのこと。 さっそく買ってきました。 (『新ロ
安田均『ゲームを斬る』 [bk1][amazon] 翻訳者でゲームデザイナーでグループSNEの設立者の一人で……日本のテーブルトークRPG、非電源系ゲームのとてもとても偉い人、安田均によるコラム/エッセイ集。 2000年から2005年にかけて、専門雑誌やらWebページやら、あちこちに掲載されたボードゲームの紹介やらボードゲームとテーブルトークRPGとの関わりやらを軽妙な口調で語ります。 落ち着きと、ユーモアと、なにより愛のある言葉だと感じました。 大人の仕事だ。 ここで紹介されるボードゲームがすごい面白そう。 遊んでみたくなりましたよ。 やったことないんだよなぁ、出会い損ねている。 いやいや、今からでもぜんぜん遅くないんで、そのうち機会みつけて、ぜひやってみよう。 そう思わせてくれた。 「よく知らないけれど、面白そうな方向」に人をキックしてくれた。 タイミング的に、いま読めてよかっ
梅田卓夫『文章表現 四〇〇字からのレッスン』 [bk1][amazon] 1.自分にしか書けないことを 2.だれにもわかるように書く ための文章創作講座。 ただし「一般的な」文章創作講座ではない。 ここで書かれる文章とは、有用であったり有益であったりすることを目的とはしない。 (結果として有用であったり、有益であったりはするかもしれないけど) 一言で言うなら「空の飛び方」とか「魔法の使い方」。 それに近しい「文章の書き方」を、ここでは志向しているように、俺にはみえる。 うたうこと、おどることが魔法であるように。 文章を書くこともまた魔法。 つむぎ、とらえなおし、変化させ、つかう。 つまるところ言葉とは魔法のうち。 そういう「当たり前のこと」を再認識させてくれた一冊。 高く高くはやく空を飛ぶ、あなただけの方法。 名文であること。 類型の強制力。 一般概念。 ジャンル。 わかり
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』に登場する本読み少女、長門有希さんが劇中なにを読んでいるのかを調査・検証する。 では第9話 『サムデイ イン ザ レイン』から。 初のTVアニメオリジナルエピソード。 長門有希、部室で本を読む。 今回は書名が見え見えなので超簡単。 一冊目が阿部和重『グランド・フィナーレ』。 二冊目が綿矢りさ『蹴りたい背中』。 阿部和重『グランド・フィナーレ』が第132回芥川賞受賞作。 綿矢りさ『蹴りたい背中』が第130回芥川賞受賞作。 長門さん的には芥川賞受賞作祭りが行われていたご様子。 第131回芥川賞受賞作、モブ・ノリオ『介護入門』が抜けているので、この二冊のあいだにあったのかも知れない。
宇仁田ゆみ『うさぎドロップ』1巻 [bk1][amazon] 死んだ祖父には隠し子がいた!? 三十路男、幼子をあずかる。 6歳の女の子を育て、ともに暮らしていくなかで、主人公の三十路男が次々と「子どもを育てる人」の眼差しを獲得していくさまがすごい好ましかった。 子育てとは、子を育てる人々が織り成す社会に新たに参入することなのだ。 たぶん。 なんちて。 三十路男の祖父が大往生。 ひさしぶりに実家に帰ると、そこには見知らぬ女の子がいた。 聞けばその子は爺さんの隠し子で、つまりは三十路男の叔母(6歳の叔母!) なんぞ事情があるものか、母親は失踪して居らず、女の子は天涯孤独の身。 親族一同が集うゴタゴタのなかで女の子が露骨に厄介もの扱いされるのに厭いた三十路男は、勢い余って女の子を引き取ることにする。 りん! こんなろくでもねートコ 子どもが いるトコじゃ ねーぞォ おれんち 来るかァ?
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』に登場する本読み少女、長門有希さんが劇中なにを読んでいるのかを調査・検証する。 では第7話『ミステリックサイン』から。 神林長平『膚の下』。「はだえのした」。 『あなたの魂に安らぎあれ 』、『帝王の殻』に続く「火星三部作」の完結編。 神林長平『膚の下』は、人間と機械(人造人間、人工知能、機械人……非人類知性?)とのコミュニケーションをテーマに書かれた作品(このテーマを神林長平は書き続けてきた、と言った方がいいかもしれないが)。 『涼宮ハルヒの憂鬱』と神林長平『膚の下』を両方読んでいる人が見れば「なるほど」と思うセレクションかもしれない。 キョンのあのモノローグを背景に、ここで長門さんに『膚の下』を読ませる。 う〜ん、わかってるなぁ。 いや、単純に感嘆しよう。 なんつう美しいシーンだ。
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』に登場する本読み少女、長門有希さんが劇中なにを読んでいるのかを調査・検証する。 では第5話『涼宮ハルヒの憂鬱 III 』から。 長門有希、図書館へ行く。 長門有希の本読みぶりをふら〜っとした歩調で表すこと見事。(原作どおり) 今回も書名が判別できない。 というか、表紙が白い以外わからないが、書名があることだけは窺える。 実在する書籍だろう。 原作に当たろう。 なんだか難しい名前の外国人が著者の哲学書を大切そうに抱える長門を急かして駅前に戻って来た俺たちを、三人は三者三様の反応で出迎えてくれた。 「難しい名前の外国人が著者の哲学書」という明記があり、そして表紙が白く、長門有希の100冊の中に含まれている。 ここまで絞り込まれたならば簡単だ。 ドイツの哲学者、ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルの代表的著作『精神現象学』。 その長谷川宏訳であろう、と推
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