金がなければ戦争は出来ないが、戦争は金になるのかというと事情はそれほど単純でない。古代ギリシャの史家ツキジデスは「戦争は兵器の問題と云うよりは支出の問題なのであり、支出が可能なら兵器も使い物になる」といった。これは金がなければ戦争は出来ないことを言っている。本書は戦争の経済的側面を常套の経済的手法を使って説明することである。しかし戦争のバランスシートやキャッシュフロー表といった財務諸表を作ることではない。そんなことを出来る理論はない。なぜなら出費は分っても利益(便益)が確定できないためである。戦争にはこれこれの利益を上げると云う経済的目標がないのである。 訳者山形浩生氏が云うように、「この本は別に新しいことを述べて本ではない。全く新しい理論を展開しているのではなく、著者はノーベル賞を貰うほどの高名な経済学者でもない。本書は戦争をめぐる経済の話題を初歩的なマクロ・ミクロ経済理論を使って分析し