経済学における最適インフレ率の議論を読めば色々と書いてあるのだが、世間ではインフレーションの弊害が必ずしも理解されてはいないようだ。学術的に望ましいインフレ率が確定したわけでも無いので、やむを得ないところもある。しかし、素朴に物価が上がったら困ると言う以上の問題が、潜在的にはある。これに関して立派な展望論文*1もあるのだが、大雑把に問題点を整理してみたい。 1. 貨幣保有コストの上昇が、取引費用を増やす インフレには、貨幣保有コストを増加させて、取引費用を増やす傾向がある。貨幣の保有が損になるから、貨幣やそれに近い資産を持ちたがらなくなる。低利の預金を高利の投資に変える、インフレ連動の債務契約を結ぶ、インフレで実質価値が落ちない不動産や株式などの資産を保有する、外国通貨建ての資産保有を増やすことが起きる。手間隙がかかるだけではなく、融資や投資の阻害になる時もあり、そうなると資本蓄積にも支障