東京から地方に引っ越して悔しいことのひとつは、今年の3月に公示される東京都知事選に参加できそうにないことだ。誰が立候補するかはいまだに判らないが、とにかく石原慎太郎を落選させることだけを楽しみにしていたのに。 なお石原慎太郎は1975年の都知事選にも立候補し、落選している(当選したのは美濃部亮吉)。この事実は公式サイトなどでは触れられていないようだが、沢木耕太郎『馬車は走る』(ISBN:416720908X)所載の「シジフォスの四十日」は、石原サイドから見た選挙戦を描いている。取材対象に対して安易な価値判断を下さないのが沢木ノンフィクションの魅力だが、石原慎太郎にはどうにも好感を持てなかったようだ。 新聞のカメラマンが、食事しているところを撮りたいと申し出る。後方のステージから、束の間の休息を取っての食事である。「チェッ、食事くらいひとりで食べさせてくれよ」という気持ちもわからないわけでは