高校生の時、「音楽がないと生きていけない」なんてケータイブログに書いてしまう人のことが嫌いだった。 その表現が比喩であることを差し引いても、音楽は生活に彩を与え豊かにする嗜好品であって、生活の根源を構成する必需品ではない。 その当時から僕はCDを漁って音楽評論を読みまくりライブに足繁く通っていたけれど、いわば贅沢品である音楽を、途方もない重さを持つ生命と同列に並べてしまう想像力の欠如に対して嫌悪感を覚えていたのだ。 人の生き死にに音楽が入り込む隙間などない。「お前は点滴の代わりに音楽を打って生き永らえるのか」と怒りに似た感情さえ持っていた。 それから十年の月日が経って、僕は本当に音楽が生き死にに関わる世界の中を生きることになった。 人を殺す力を持つ未知のウイルスの感染拡大の場であると槍玉に挙げられたライブ企画が、次々と中止を余儀なくされて、すっかりその姿を消してしまったのだ。 そこで活躍し