ぼくの父は、昔はタバコを吸っていて、そのせいなのかそのせいでないのかはよくわからないが、喫茶店にばかり行っていたような気がする。 子どもの頃、梅田の喫茶店に連れて行ってもらい、エクレアといういかにもうまそうな食べ物がショーケースに陳列されていたので、それを注文したところ、店のおばちゃんが冷蔵庫から透明のビニール袋に入った、シュークリームのミイラみたいなのを出してきて、手で袋を開けて皿に置いたのを見て、ひどくがっかりしたのを覚えている。 当時の広告業界はひどくいい加減で、クリエイティブディレクターはいつもデスクにおらず、いきつけの喫茶店に直接電話して呼び出したりしていたという話も聞く。 父もそういう環境の中で仕事していたのだろう、どっちにしたってまともな感覚じゃあない。 それで、もれなくぼくにもまともじゃない感覚は受け継がれていて、まあ別に喫茶店に行かなくても仕事はできるが、ちゃんとした姿勢