一昔前のSF小説にしばしば登場した構図として、「国家ではなく企業が世界を統治する」というのがあった。たとえば、国家は存在しているものの、実際には巨大な企業あるいはその連合体がその国の重要な意思決定を行っているというものや、あるいは国家そのものに企業が取って変わっているというようなものである。とりわけ、このような構図に情報ネットワークが拡大し、個人が巨大なネットワークに接続する近未来社会という状況を重ね合わせるのは、当時のSFのひとつパターンであったといってもよいだろう。 単純に、国家の中で巨大な企業が政治的影響力を行使する、というような状況はしばしば起こりうる現象であるが、それだけでなく企業が実際にある地域を統治する、という状況もじつはときどきみられる。イギリス東インド会社によるインド統治や東清鉄道、南満州鉄道の鉄道附属地が有名な例だが、イギリス東インド会社以外の植民企業や新しい島を企業が
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