3年生の秋、ある日から突然、ゼミ生がリクルートスーツ姿になる。 学内で企業の就職説明会がはじまるのだ。 毎年、教室を間違えたかと思って、ぎょっとしてしまう。 みんな髪も黒く染めて、表情までかしこまる。 いつも時間を延長してやってきたゼミも、定時になるとほとんどが退席していく。 こうして「就活」の時期がくると、大学はその役目を終えたかのようになる。 4年生の卒業論文に向けたゼミも、壊滅的だ。 企業の面接や選考試験は、もっぱら平日の授業時間帯に入る。 もとより、みんな就活のことで頭がいっぱいで、授業どころではない。 5月の連休が明けるころには、内定をもらう学生もでてくる。 学生どうしのあいだでは、髪を茶色に染めなおしたら、内定が出たと勘づくらしい。 そして、内定を手にした学生から、今度は「卒業旅行」に行くようになる。 「卒業旅行」といえば、卒業前の春休みに行くものだと思っていた