真言宗の開祖である弘法大師空海(774-835)は、亡くなった後も多くの人々の信仰を集めてきました。その肖像や生涯を描いた絵巻なども、数多く制作されています。 なかでも、現在も東寺に所蔵されている「弘法大師行状絵詞(こうぼうだいしぎょうじょうえことば)」(重要文化財)は、全12巻に及ぶとても立派なものです。この絵巻の制作が計画された応安7(1374)年は、大師の生誕600年にあたる年でした。東寺にとっても、その記念となる一大事業だったのでしょうか。東寺百合文書の中には、この絵巻の制作にかかわる「大師御絵用途注文」という文書があります。 モ函30号「大師御絵用途注文」康応元年(1389) 「御絵用途注文」とは、どんな意味でしょうか? 現在では、「用途」はつかいみち、「注文」は人になにかを依頼する、といった意味です。しかし中世では、「用途」は必要な費用、「注文」はある事柄についての要件の記録、