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ブックマーク / atogaki.hatenablog.com (7)

  • あとがき27 バブル期の日本人がどれだけバグってたか見てほしい: 叢書「思想の海へ [解放と変革]」刊行のことば(社会評論社、1989) - あとがき愛読党ブログ

    自分は中高生のころ岩波文庫の末尾にある岩波茂雄の(実は三木清の草なんだって)「読書子に寄す―岩波文庫発刊に際して―」が好きで好きで、何度も読み返して、「読者は自己の欲する時に自己の欲する書物を各個に自由に選択することができる。」の文に動かされ、「うおお買わなきゃ」と書店に走り、「携帯に便にして価格の低きを最主とす」の言に化されて、新たな文庫をわざわざポケットにねじ込んだりしたものだった。 それはさておき、この「読書子に寄す―岩波文庫発刊に際して―」にせよ、○○文庫や○○新書などシリーズものの「刊行のことば」は、版元の意気込みとともに、図らずも時代を映す鏡になっていることが多い。岩波文庫なら、円の流行と戦前の教養主義を、青版岩波新書(1949)なら敗戦後の民主化を、というように。 今回紹介するのは、1989年、バブル真っ盛りに書かれた叢書の「刊行のことば」だ。社会評論社という出版社があっ

    あとがき27 バブル期の日本人がどれだけバグってたか見てほしい: 叢書「思想の海へ [解放と変革]」刊行のことば(社会評論社、1989) - あとがき愛読党ブログ
  • あとがき21 人生有限、学無窮:竹内理三編『鎌倉遺文』(東京堂出版、1971-1995) - あとがき愛読党ブログ

    みなさん、歴史家・竹内理三(1907~1997)をご存じだろうか。 かつてある古代史のゼミで、先生がこう宣言した。 「みなさん、塙保己一と竹内理三には足を向けて寝てはいけませんよ」 もちろん塙保己一は、江戸時代に『群書類従』を編纂した盲目の大学者だ。現代人なのに、それと肩を並べるとはなにごとか。 写真でみる限り、竹内理三は、小柄なおじいさんだ。愛知県知多半島の田舎で生まれ、終生知多弁が抜けず、生まれつき体が弱かった。そんな小柄なおじいさんが、超人的としか言いようがない仕事を遺しているのである。 『竹内理三著作集』全8巻に及ぶような研究業績、そして数多くの事典、史料集、弟子の育成。とくに大書されるのが、『寧楽遺文』(全3冊、1943-1944)、『平安遺文』(全13冊、1946-1968)、『鎌倉遺文』(全46冊、1971-1995)の遺文シリーズだ。これにより、奈良・平安・鎌倉時代の日

  • あとがき16 奥出雲から流出した仏像たち:映画『みんなのアムステルダム国立美術館へ』(2014年、オランダ) - あとがき愛読党ブログ

    この間、劇場で映画『みんなのアムステルダム美術館へ』を観た。 映画 『みんなのアムステルダム国立美術館へ』公式サイト 前作『ようこそアムステルダム国立美術館へ』(2008)に引き続き、美術館の改修工事をめぐるバタバタを描いたドキュメンタリーだ。内輪の話はまとまらず、外野との話し合いは徒労。そんなてんやわんやを淡々と切り取るカメラの意地悪さがたいへん良い。 こんなビターなコメディ調の中で、一服の清涼剤が、仏像男子ことメンノ・フィツキさん(アジア美術学芸員)と、彼が購入してきた日の仁王像だ。 REALTOKYO | Column | Interview | 114:メンノ・フィツキさん(アムステルダム国立美術館アジア館部長) パンフレットによれば、これは2007年2月に美術館が購入したもの。2m以上ある優品で、アジア館リニューアルの目玉になる。メンノさんがこれが旧蔵されていた廃れた山寺にはる

    あとがき16 奥出雲から流出した仏像たち:映画『みんなのアムステルダム国立美術館へ』(2014年、オランダ) - あとがき愛読党ブログ
  • あとがき11 著者名を信じるな!? :大類伸『列強現勢史・ドイツ』(冨山房、1938年) - あとがき愛読党ブログ

    大類伸(オオルイ, ノブル, 1884-1975)という、変わった名前の大物西洋史家がいた。東北大の教授だった人物だ。ルネサンス研究など文化史で一ジャンルを築き、日の城郭史にも詳しい。国会図書館の目録で調べると、大類の著作は100以上引っかかる。来の中世文化史のみならず、著作の範囲は西洋史全般にわたっている。 それらの中に、1938・39年に富山房から出た『列強現勢史』というが3冊ある。ロシアドイツ、東欧などの諸国の近現代史をまとめたものらしい。どれも今の新書1冊分ぐらいの分量はあるから、1年半で3冊というのはなかなか早い刊行スピードだ。 そのドイツ篇の序を見てみよう。 書は列強の現勢を理解せんが為め、各国民毎に約五十年来の史的発展を考察したもので、先ずドイツ篇を公にした。編の刊行には、資料の蒐集、整理更に文の叙述等すべての点に於て、新進のドイツ史専攻家文学士林健太郎君の力に

    あとがき11 著者名を信じるな!? :大類伸『列強現勢史・ドイツ』(冨山房、1938年) - あとがき愛読党ブログ
  • あとがき10 あとがきを信じるな!?: 網野善彦『無縁・公界・楽』(平凡社、1978年) - あとがき愛読党ブログ

    このブログのあとがき愛読もようやく10回目。それを記念し、今年没後10年の網野善彦を取り上げたいと思う*1。 無縁・公界・楽―日中世の自由と平和 (平凡社ライブラリー (150)) 作者: 網野善彦 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 1996/06 メディア: 新書 購入: 4人 クリック: 50回 この商品を含むブログ (92件) を見る 「作家の言葉を信じるな」という金言を耳にした。 曰く、作品を研究するにあたり、作家自身の言葉に振り回されすぎるな、ということらしい。 その好例が近世洋画の祖、司馬江漢だろう。 彼は、長崎にてオランダ人イサーク・ティチングから画帖を送られ、それで西洋画をマスターしたと自ら称しており、一昔前の辞典類に「江漢はオランダ人から洋画を学んだ」と記載されていたのもこれが根拠だったという。 しかし研究者らがよく調べたところ、そのオランダ人が滞日時期と江漢が長崎

  • 中世古文書の画像が見れるデータベースまとめ稿 - あとがき愛読党ブログ

    ※随時更新(2020/4/25 最新16訂: 京大の淡輪文書、佐賀県立図書館を追加)。情報募集中! 「信長の印章ってどんな感じだっけ?」 「あの武将の花押が見てみたいなあ」 「の図版に使う古文書を探してるんだけど」 そんなお悩み、ウェブで解決しましょう。ネット上で見れる中世古文書のデータベースをまとめてみました! ※画像の転載等の利用については、各DB内の規定に従ってください。 東寺百合文書WEB より、永禄11年9月日織田信長禁制。当時信長の官途は弾正忠。印銘は「天下布武」。 ※東寺百合文書WEBのサイトポリシーに基づき画像は転載されています。 公共機関 東寺百合文書WEB (京都府立総合資料館) 古文書DAの王者。所蔵の「東寺百合文書」約25000通を全部公開。一部釈文あり。利用は自由(CC-BY)。 新日古典籍総合データベース 国文学研究資料館を中心とする諸機関の古典籍画像が公

    中世古文書の画像が見れるデータベースまとめ稿 - あとがき愛読党ブログ
  • あとがき4 「造反教官」の1970年 : 佐藤進一『日本の中世国家』(岩波現代文庫、2007年) - あとがき愛読党ブログ

    佐藤進一(1916~)。日中世史の研究者である。饒舌ではないが、その篤実な仕事ぶりは良く知られる(その一例は、http://newclassic.jp/2072 )。書いた論文や著書は決して多くはない。「確実なことをできるかぎり少なく書く、という実証史家の道徳律*1」を体現している研究者である。 そのエッセンスがつまった『日の中世国家』(岩波現代文庫、2007年、原1983年)の「はしがき」に不穏な一節がある。 ところで、書を成すに意外の年月を要した原因と責任の大半はもとより著者の浅識と疎懶に帰せられるけれども、ひとつには一九六八年以来の東大文学部闘争との関わりが、数年に及ぶ課題の放擲を余儀なくさせたからである。(…)そしてまた、あの年の春ゆくりなく出逢い、やがてわが心への重い問いかけとなってしまったあの闘争への、ささやかな関わりがなければ、書はこのようなものにならなかったであろ

    あとがき4 「造反教官」の1970年 : 佐藤進一『日本の中世国家』(岩波現代文庫、2007年) - あとがき愛読党ブログ
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