以前ベーシックインカムの導入を訴える文章を書いたことがあるのだが、『ゲンロン0 観光客の哲学』を読んでから考えが変わった。 ベーシックインカムの何が問題かベーシックインカムの大前提である「全員一律」という福祉原理は、「誰が『全員』に含まれるのか」というメンバーシップの確定を必要とする。それは同時に、新たにメンバーシップを得ようとする人間を排除する論理に帰結する。言い換えれば、ベーシックインカムは「友敵理論」の政治と不可分である。 そもそも「セイフティネット」とは「安全網」であり、「高所からの転落を防止する網」であって、転落者のための安全装置である。ベーシックインカムはどうだろうか、まだ転落していない人にも「全員一律」に給付されるのであって、定義上「セイフティネット」とは呼べない。より妥当なメタファーは、例えば「底上げ」のようなものだろう。 ベーシックインカム制度がその受給資格者(メンバー)