すべてのジャンプを失敗したSPから一夜明けたフリー——。失意の浅田は見事によみがえり、代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を鮮やかに決めた。 わずか1日で立ち直った背景に佐藤信夫コーチ(72)の後押しがあった。 フリー当日の朝、やはり浅田はショックを引きずっていた。覇気のない姿に佐藤コーチは、危機感を覚えた。リンクサイドのフェンスを両手でバンバンとたたきながら、「しっかりやるんだ」と叱り飛ばし、34年前の話を持ち出した。 高熱で2日間寝込んだ教え子が気力を振り絞り、会心の演技を披露した。どんな状況に追い込まれても選手は気持ち次第だと激励した上で、「リンクで何かあったら、助けにいってやるから」と諭した。長いキャリアを誇る恩師の激情に接した浅田は、ようやく迷いが吹っ切れた。 金妍児に敗れたバンクーバー五輪後、師弟関係を結んだ。3年前の12月に他界した母親の匡子(きょうこ)さんから「どう