「われわれは、このようになるということを分かっていたのだ」と、プーチンの行動を観察し続けたフィオナ・ヒルは国際論壇に向けて矢を放つ。その鋭い批判が射貫くのは、グローバルな国際協調体制という楽観主義に溺れた西側諸国の傲慢さだ。ロシアのパワー・ポリティクスからの挑戦に、自由民主主義が揺れている。 1.緊迫のウクライナ情勢 2022年の幕開けは、平和な時代の到来を告げるものとはならなかった。引き続き国際関係は深刻な緊張や対立を孕むものであり、これまで以上に軍事衝突勃発の危機は高まっている。 近年の国際関係を大きく左右してきた米中対立の構図に加えて、ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻が、よりいっそう国際情勢を不安定で不透明なものとしている。軍事侵攻が始まった2月24日以降の議論を取り上げることは次回に譲るが、年末から現在に至るまでの国際論壇はウクライナ情勢をめぐる論考で溢れている。おそらくは、こ