キャラクター性の継承という視点 もともと,初音ミクというキャラクターに与えられた情報はあまり多くない。それはたとえば,16歳という年齢だったり,緑髪ツインテールというビジュアルだったりする。しかし,普通のアニメのキャラクターと違い,その設定には多くの”ゆとり”がある。クリプトンが公開した初音ミクの公式設定は,極めて抽象的である。したがって,初音ミクを楽曲の登場人物とするためには,各製作者が自分なりの初音ミクの設定を考え,不足部分を補完しなければならない。 まるでオブジェクト指向で抽象クラスを継承して具象クラスを定義するように,楽曲の製作者は初音ミクに足りていない情報を適宜実装し,初音ミクという共通の名前を持った新たなキャラクターを作り出すのである。 こうして生まれた新たな初音ミクは,楽曲と併せてひとつの世界観を構成する。それぞれの楽曲の中に居るのは性格の全く異なるキャラクターであるにも関わ